読書のすすめ

02.3.18 BTI.No.44より

いよいよ春。花のたよりも聞かれる頃となりました。東京でも、梅は終わり、桜の開花を待つばかりになりました。皆様いかがお過ごしのことでしょうか。

今年の成果

入試も終え、今年のBRAIN の成果といえば、何と言っても大学受験でしょう。4年目の入試ではじめて全員合格に至りました。ほとんどが第一志望に合格でき、先日、教師一同で祝杯をあげました(in BRAIN )。

とても、こんな小規模で細々とやっている塾とは思えない成果。本当に生徒諸君の気合には頭が下がる思いです。大学受験だけでなく、高校受験も、中学受験もこれだけの成果が残せたのは、生徒の努力の賜物であると思います。よかった。酒のうまいこと、この上なしというところです。是非、今年度も、受験生諸君には力の限りをつくし、今年以上の成果を期待します。

読書のすすめ

さて、合格者諸君にひとつ要望があります。是非本をたくさん読んでもらいたい。これが私の要望です。特に新大学生の諸君に。

シェークスピアの「オセロ」を読んだことがありますか?「オセロ」第一幕ベネツィアの場では、ベネツィアの将軍に選ばれた黒人オセロと、白人の元老院議員ブラバンショーとの確執が描かれています。

ブラバンショーの娘デズデモーナは、ブラバンショーが知らぬ間にオセロと結婚を決めてしまう。これを知ったブラバンショーはオセロに「父でさえ裏切った娘だ。お前もいつかは裏切られるだろう」と呪いの言葉を投げつける。

この作品は、黒人が上に立ち、白人が部下になるという当時の世界の非常識を、効果的に描き、第二幕以下で、部下の白人ヤーゴが、純粋な黒人将軍オセロの嫉妬心をあおることによって、オセロを破滅に追いやるというお話です。シェークスピア作品には珍しく、白人と黒人との人種差別を基底に置いたこの作品は、私が最も感銘を受けた作品でもあります。

この「オセロ」をオペラ化したのがヴェルディのオペラ「オテロ」です。

ヴェルディの”オテロ”

高校時代、初めてオペラ「オテロ」を聞いた時の衝撃は忘れません。一度聞いてみてください。「当代随一のオテロ歌い」といわれた、デル・モナコで聴きましょう(ドミンゴじゃね…)。オーケストラは、これまた凄いカラヤン指揮のウィーン・フィルでどうぞ。目の玉飛び出んばかりの凄まじい演奏です。

それはさておき、なぜ、オテロは父親にののしられてまで手に入れた最愛の妻デズデモーナを、不倫の疑いで殺すまでしたか? なぜ、それがヤーゴの策略だと気づかなかったのか?

この作品で最も疑問と思われるこれらの答えは、原作の第一幕でブラバンショーがオセロに言い放った呪いの言葉が、オセロの脳裏に植えつけられていたからではないでしょうか。その意味で、この原作の第一幕は、この作品の中でも最も重要な部分であるはずです。

その最も重要な第一幕を、何とヴェルディはカットしているのです!! ヴェルディの「オテロ」は第二幕のトルコ軍が嵐で撃沈したところから開始されているのです。なぜなんだー。

“文化”の深さ

何年かたって、ドイツに行った際に、長年のこの疑問をドイツ人のヴァイオリニストに語ったところ、驚くべき答えが返ってきました。

「シェークスピアの作品なんて、ヨーロッパ人なら誰でも知っている。みんなが知っているのにわざわざ第一幕なんて入れることはないだろう。…」

これが、「文化」というものでしょう。ヨーロッパ文化の奥深さを改めて認識しました。自分には、この「文化」がなかったということを認識した、とっても悔しい一夜になってしまいましたが…。

1438年の今日3月18日は、オーストリア公、ハンガリー王のアルブレヒトが神聖ローマ皇帝に即位してアルブレヒト2世となった日です。以後、皇帝はハプスブルク家に定着することになり、ハプスブルグ家の繁栄の基点になりました。ヨーロッパはこのハプスブルグ家のおかげで、音楽、絵画、彫刻、建築、さらに文学などなどの繁栄をもたらし、ヨーロッパ文化を築いていきました。今でも、ヨーロッパはハプスブルクの息遣いが聞こえてきます。

二十歳になったら

新大学生の諸君は、是非書物を通して、新しい扉を開けてください。日本だけでなく、世界の文化を受け継ぎ、実り多い大学生活を送ってもらいたいと思います。

そして、二十歳になったら、シェークスピアでも、ヴェルディでも、ハプスブルグでも、さらに、実は私が一番好きな、19世紀末の爛熟したウィーン世紀末文化でもいいから、こんな香りのする話などをしながら、酒を交わしたいな、と思っています。