「眺める」と「見る」

00.9.14 BTI No.23より

日中は今なお厳しい暑さが続き、そうかと思えば朝からの長雨。天候不順の今日この頃皆さんいかがお過ごしでしょうか。
さて、今月からご存じのように日本語王ブロジェクトを開講し、第1回は15名の参加がありました。内容として小学校1年の漢字からスタートしたのですが、随所に検定テストを用意し、それをクリアすることができないと元に戻るという双六(すごろく)方式を取ったため、なかなか先に進めず、中3の諸君でも結局小学校3年まで進んだ生徒は1名もいないという状況でした。侮ってはいけないということですね。

「彫刻」って何ですか?

第1回目から、生徒の問題に対する取り組み方や、言語能力にはいろいろと考えさせられることがありました。

「彫刻刀でほる」の「刀」を書かせる小2の問題をやっていた小4の生徒の例です。まず「彫刻」という字の読みが分からず質問してきました。これは別に読めなくても仕方ありません。「ちょうこく」と読むことを教えた後も、その生徒はもじもじしているので「どうしたの」と聞いたところ、「彫刻って何ですか」、と尋ねてきました。正直驚きました。小4で「彫刻」自体を知らない生徒がいるわけです。今までに見たことないんでしょうか、図工室などで目に入っているはずです。小2でも知っていて当り前だからこそ、この日本語王の小2の設問になっているわけです。

この生徒には「彫刻」というもの自体を教えてその場はそれで終わりましたが、この調子だと、教えるべきこと、知っていなければいけないのに漏れているものがまだまだ大量にあるのではないかと、思われます。

BRAIN って知ってる?

こういった言語能力の弱さの原因として以前から考えていたことがあります。高学年の生徒、さらに大人でもよくあることです。

最近は、英語をよく耳にします。会話でも「この問題のアイデンテティは…」とか「ネガティブな発想では…」等、こういう会話を聞かない日はありません。さらに看板等にも横文字が横行しています。では、いろいろな言葉を見たり、聞いたりしているはずなのにその意味を辞書等でひいて確認するということをしているのでしょうか。

BRAIN という名前ですが、自分が通っている塾の名前がBRAIN であることは認識しています。ところがこのBRAIN の意味を辞書で引いて確認した生徒は何人いますか。意味も分からず通っている生徒もいるのではないでしょうか。

小学校からの英語授業…

「眺める」と「見る」とは根本的に異なります。「物の本質を眺める」とは言いませんね。「物の本質」は「見る」ものであるということの認識が不足している生徒たち、大人たちが多すぎるのではないでしょうか。家庭での会話がなく、テレビや漫画(中にはいいものがあるということは認めますが)が中心で、その情報を「眺める」癖がついてしまったことが言語能力低下の原因の一つであると思います。

こういった現状を知っているのか知らないでいるのか、文部省をはじめとする国のお偉方は小学校からの「英語導入の必要性」をなぜか叫んでいます。自分の国の言語能力が低下しいている今、この政策に正当性がないことは火を見るより明らかです。

フランスでは初等・中等教育の英語を一切排除するようになったという話を聞きました。本当かどうかは未確認ですが、これがもし本当でも、あの自分の国の言葉が世界一美しいと思っているフランスならやりそうなことだと納得してしまいます。「自分の国のものは常に最高である」というほどの愛国心を持つフランスの教育理念には良しきにつけ悪しきにつけ、学ぶべきところがかなり多くあるのではないかと感じます。

言語能力を高める

国語はすべての学問の基礎です。このすべての基礎である国語のさらに基礎である言語能力をしっかり高めていくことが学力、そして学力以上に人間性を伸ばす唯一の秘訣であるという認識を改めて持っていただきたいと思います。

「日本語王」ブロジェクトはさらに続いていきます。積極的に参加していただき言語に対する認識を深めていただきたいと思います。