妖怪と子供

あの猛暑から2ヶ月たち、夜などはもう寒くなってきました。皆様いかがお過ごしのことでしょう。

旅館全焼

突然ですが10月に入りすぐのこと、大変な火事がありました。10月4日午後8時25分ごろ岩手県二戸市金田一で一軒の旅館が全焼しました。五日市家が経営する「緑風荘」がその旅館の名前です。そうです、あの『座敷わらし』で有名な旅館です。

「座敷わらし」って何?

「座敷わらし(童子)」は、主に岩手県に伝えられる精霊的な存在で、座敷または蔵に住む神と言われています。髪はおかっぱで、男の子だと絣(かすり)か縞の黒っぽい着物、女の子だと赤いちゃんちゃんこや小袖、ときには振袖を着ているといわれています。

悪戯好きで、小さな足跡を灰の上に残したり、夜中に糸車を回す音を立てたり、夜になると客人の布団の上にまたがったり枕を返したり、悪戯をして眠らせまいとするが、押さえようとしても力が強くて歯が立たないともいわれる。子供と一緒に遊んだりもする。姿は、家の者以外には見えないとか、子供には見えても大人には見えないとかいろいろ言われている。

全焼してしまった「緑風荘」は、テレビ番組や雑誌のオカルト特集によく取り上げられ、日本を代表する「座敷わらし」の出没する宿としての地位を保ち続けていました。

「座敷わらし」のルーツ

一説によると、何と驚くことに「座敷わらし」は東京もかなり関係しているらしいんです。

時は14世紀、室町時代初期である南北朝時代のこと。「緑風荘」の先祖である南朝の武将が、足利尊氏の北朝との戦いに敗れ落ち武者となり、奈良から今の東京の五日市に落ち延び五日市氏を名乗ります。しかし、五日市も北朝方に押さえられ、さらに今の岩手県の南部藩(金田一)に落ち延びることに。

五日市氏には幼い6歳と4歳の兄弟がいたそうで、この東北への逃避行はかなりつらかったのでしょう、金田一までたどり着くと、兄の亀麿(かめまろ)は死の病にかかってしまいます。亀麿は死の床で「末代まで家を守り続ける」と言い息を引き取っていく…。悲しい話です…。

その後、五日市家は主家の南部藩とのつながりも強くなり、長い間、庄屋として村の代表的な存在になったそうです。この亀麿の霊が五日市家の屋敷にある奥座敷「槐(えんじゅ)の間」に棲みつき「家の守り神」となり、ときどき客人に姿を見せたり、いたずらをするようになったと言うわけです。五日市家では「座敷わらし」は「亀麿」と呼ばれ、宿では物の怪・妖怪としてではなく先祖の守り神として「緑風荘」の庭に亀麿神社をつくり祀っています。

さらに驚くことに、2009年、日本の文化や伝統、芸能、学校行事を世界に紹介している外務省キッズWeb Japanにて海外向けに「座敷わらし」が出る宿として紹介されているんです!!! こうなるともう『世界の座敷わらし』ですねー。

妖怪って?

先日、鳥取は境港に行って「鬼太郎ロード」に参った話をしましたが、水木しげるによって「座敷わらし」も妖怪になってしまいました。古典的な妖怪としては、河童や天狗、鬼、不思議な能力をもった狐や狸、蛇、猫といった動物たち、水木ワールドでは、猫娘や一つ目小僧、番傘のお化けや小泣き爺、砂かけ婆…。妖怪ってたくさんいますね。昔テレビでやっていた妖怪人間「ベム・ベラ・ベロ」なんていうのもいました。決め台詞は「はやく人間になりたーい」でしたね。でも妖怪って、ちょっと笑えるような存在でありながら、悲しい存在だと思いませんか?

妖怪と子供

河童にもいろいろな言い伝えがあります。川で遊んでいた子供が誤って川に落ち、流れに引きずり込まれてしまった。そんな子供が河童になって、寂しく川辺で遊んでいる、とか…。「座敷わらし」でも、幼い亀麿の死が座敷わらしを作り上げたと、考えることも出来ます。

妖怪と子供の死というのは、切っても切れない関係にあると思うのです。そして、妖怪は都会にはいません。ほとんどの妖怪は田舎の山村や農村出身です。

日本もずーっと昔、江戸時代よりもずっと前の時代ですが、その頃、村はわざわざ「農村」と言わなくてもすべてが農村でした。四方を山に囲まれた偏狭の地、交通も未発達と言うか、まったくない状態で、その土地から生まれて死ぬまで出たことがない人もたくさんいたでしょう。

妖怪についての仮説

そんな農村だからこそ、婚姻関係も血がかなり濃かったと思います。一歩踏み込んで考えてみると、その血の濃さが生んだ悲劇が「妖怪」を作り上げたのではないでしょうか…。

昔は、生後すぐ亡くなる子供が今の何十倍もいました。特に農村では血の濃さによって、先天的な異常を持った子供がたくさん産まれたのでしょう。奇形も多かった。もちろんその子供たちは長く生存することができなかった…。さらに流産も多かった。遺伝子の異常のため成長できずに胎内で死んでしまうんです。

大学時代に法医学を学び、血の濃さによる可哀想な奇形児の写真や標本を数多く見てきました。そんな悲しい存在の子供たちが「妖怪」として、語り継がれてきたのではないでしょうか。

恵まれた国ニッポン

現代の日本では、逆に「農村」と純粋に言えるところも少なくなりつつあります。「妖怪」も過去の話になりつつあります。しかし、目を世界に転じてみると、世界では産まれてすぐ命を失う子供たちも数多くいます。成長しても、まともな教育も受けることなく、10歳前後で働きに行ったり、嫁に嫁がされたり…。最近でも10歳に満たない女の子が強制的に嫁に行かされ出産で亡くなったという話もありましたね。

日本は恵まれています。世界中でこれほど恵まれた国はないんです。でも、この恵まれた国ニッポンに産まれて育った子供たちは、自分たちが「恵まれた存在」であるということがまったくわかっていない。

勉強嫌い、宿題しない、ものを覚えない、不平不満ばかり言う…。就職はしても「理想とは違う」とか、理想をつかむ実力もないくせに1年も会社勤めが出来ず、はてはフリーター、さらにニート…。こんな子供たちの多いこと多いこと。そして、それを助長する多数の「モンスターペアレント」の方々。このままでは、日本は「昔は恵まれた国」だったなー、になってしまいます。

BRAIN の生徒たちは、せっかくもらった大切な命です。実力を身につけ、将来この日本を、そして世界中の国々を「恵まれた国」にすることができるような立派な人間になってもらいたいと思っています。

BRAIN TRUST INFORMATION  No.105

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