偏差値と親の愛情

たしか梅雨に入ったんですよね。一体どうなっているんでしょう。真夏かと思わせるやたら暑い今日この頃。皆様いかがお過ごしのことでしょう。突然ですが、先日、保護者の方からBTI(BRAIN 通信)についての御意見を頂きました。

保護者からのご意見

「ひとつ意見があります。成績順の表の事ですが、今回(5月号)偏差値順になっています。先生の意図があっての事だとは思いますが、個人的な意見ですが点数順だといいなと思います。

例えば息子の英語100点でも偏差値58。だから下位となりますよね。私はどんなテストでも100点は偉い!次も頑張れ!と子供たちを励ましてきました。100点取ってもダメじゃん、と気持ちが萎えてしまう事を危惧しています。息子が英語で96点だった時、本当に悔しがっていました。自分が100点ではなかった事が悔しかったのではないかな。先生の狙いがあれば教えて下さい。決して急ぎではありませんので、お返事はいつでも大丈夫です。そういえば息子は今日セカンドスクールから帰って来ますよ。」

お答えします

ここでは3つの点があります。

まず第1に紙面上の物理的な問題です。個人名をBTI上に載せることは、力を尽くして勉強してきた生徒を「褒めたい」「讃えたい」という理由です。名前が載ることで「うれしい」「次も頑張ろう」、名前が載らなかったことで「次こそは名前を載せるぞ」といった気持ちを持ってもらえれば幸いです。この考えからいくと、できる限り名前を出したいというのが本心です。

ところが字のサイズから、得点と偏差値表記を併せてしまうと、氏名を3列で組むのが難しくなり、紙面の関係で多くの生徒を載せることができなくなってしまうんです。これ以上字を小さくすると非常に見難くなってしまいます。そこで、4月に得点を載せたので、今回は偏差値だけを載せることにしました。安易な考えであったことをお詫びします。

偏差値って?

第2に偏差値の意味をもう一度考えてみましょう。偏差値というのは平均が50に設定されていて、テストを受けた全生徒の得点の分布状態、平均点からどれだけ離れているか、によって変わってきます。簡単に言えば、得点が「絶対的」なものさしであるなら、偏差値は「相対的」なものさしであるわけです。

中学の頃の通知表の5段階評価を思い出してください。通知表で「5」は上位7%で偏差値65以上になります。このように昔、私たちが中学生だった頃の通知表は偏差値による相対評価だったわけです。その頃の通知表と偏差値の関係を表にしてみました。

内申点

割合

7%

24%

38%

24%

7%

偏差値

 ~35

35~45

45~55

55~65

65~

4月の中1英語月例テストは平均点89点です。100点は平均点と11点しか差がありません。しかも100点満点の生徒は受験者数9465人中1686人いました。全体の17.8%です。上の表から見ても上位の7%は越えてしまいます。これら2つの条件から、100点満点でも偏差値は58になってしまうわけです。

そこで、偏差値だけの表記だと「できる」「できない」の正確な判断は不可能になります。したがって、成績表は「得点」「偏差値」の併記が必要になるわけです。それを怠ったのが、5月のBTIの表記だったということです。ごめんなさい…

ただ、テスト自体が平均50点後半で実力差がはっきり表れる「いい問題」の場合、偏差値の示す数値はほぼ正しいといえます。入試問題では、極端に難しく平均点が30点くらいで、前後10点以内に80%の生徒が入ってしまうような悪問も多いんです。何を考えて入試問題を作ってるんでしょうね…。

100点の持つ意味

さて、第3の点ですが、これが一番大事なところです。たとえば95点という点数はかなり高い得点ですよね。では、100点と95点は同じくらい、いい点数といえますか?

それは言えません。95点は「95点」の力でしかないんです。100点は、「100点」の力かというとそうではありません。中には「100点」の力のこともあるでしょうが、「100点以上」の力かもしれないんです。「105点」の実力であったり、「120点」の実力であったり、はたまた「200点」の実力であったりするかもしれないんです。だからこそ、100点は「偉い!!」んです。

月例テストだけではありません。日々、BRAIN で実施している小テストもそうです。ここで100点をとるか否かで、その生徒の努力度が見えてくるんです。

小テスト類は常に100点を目指して勉強すること。これが、BRAIN ではもっとも大切なことなんです。「あー、計算ミスしちゃった…」とか「漢字一個書けなかった…」とか「スペル間違えちゃった…」と言って、平気で小テストをいい加減な気持ちでやっていませんか? 100点目指して頑張りましょう。

教育は愛情である

事情はあるにせよ、安易に偏差値順に載せてしまって後悔しています。せめて、末尾に

「平均点等により偏差値は変動しますので、テストの得点も併せてご覧ください」くらいの一文は入れるべきだったと思います。

しかし、このメールはとても有難かったです。保護者の方に感謝いたします。すべて言われることは「正しい」ことです。そして、それ以上に嬉しかったことは、子どもに対する親の愛情の深さをこのメールから感じることができたからです。

「そんなこと当たり前でしょう」なんて言われそうですが、最近はなかなか皆さんそうはいかないようです。成績表が返されると、偏差値と合格レベルとをにらめっこ…、なんて方、多くありません?

冷静に、そして愛情を持って子どもを育てること。これは難しいことです。

いい酒とかけて 親の愛ととく その心は 静かにそっと注ぐもの

こんなCMを作るから、キリンの酒は好きなんです。

BRAIN TRUST INFORMATION  No.79

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